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2006/11/19 14:57:43: 感想: 『狼と香辛料 III』

カテゴリー: 読書
投稿者: さひろ
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狼と香辛料 III

タイトル: 狼と香辛料 III (amazon)

作者: 支倉凍砂

絵師: 文倉十

レーベル: 電撃文庫

出版年月日: 2006-10

ASIN: 4840235880

 

いまさら感漂いまくりではあるのですが、再読して改めて「おもしろい」と思ったので感想を。ま、ほんとにいまさらのいまさらなのですが。

 

旅の道連れとなった、行商人ロレンスと齢経た狼の化身にして豊穣の女神ホロ。ホロの故郷、北の町ヨイツを目指してクメルスンの町にやってきた二人。おりしも町は、冬の大市と祭の期間。そこで出会った魚商人アマーティはホロにひかれ、彼女をロレンスの手から奪うべく、ある契約を迫る……。

 

感想を書くにあたって1巻・2巻と読み比べたわけではないので、あくまでも個人的な印象なのですが、支倉さん、めきめき腕を上げているように感ぜられます。デビューから1年も経っていないことを考えると、これはなかなかたいしたことではないかと。

たとえば今回のおはなしの縦糸(と思うのですが)、信用取引(信用売り)についての説明の部分など、とても巧妙かと思います。信用売りについて知識のないアマーティに対して説明することで読者に対しても説明をしつつ、その後の描写で読者に対して随時知識を提供してゆく。そして、知識の提供として充分な役割を果たしているのみならず、それをストーリーに絡めつつ提出することで、読者に「これからどうなるんだろう?」というドキドキ感を与えることにも成功しています。達者なものだと思います。

全体の構成もなかなか。序盤ではロレンスとホロの掛け合いを交えながらゆったりとした描写で背景世界の魅力を伝え、そこからアマーティのホロへの求婚というイベントを使って一気に緊張感を盛り上げ、おはなしの縦糸となる商売の駆け引きへとはなしを持ってゆく。そこから、ロレンスとホロとの関係という横糸を交えておはなしの緊迫度をさらに上げて行き、大団円に持ってゆく。一冊を通してのおはなしの流れが、とてもしっかりしているのです。ほんと、なかなか堂に入ったものです。

 

さて、このシリーズの大きな魅力は、ライトノベルではほとんど扱われたことがない(と思うのですが)商売・経済をおはなしの主軸に持ってきていることにあることは異論をまたないところであると思うのですが、横糸を成すロレンスとホロとの丁々発止のやりとりも、また大きな魅力になっていると思います。このやりとり、というか会話文はめっぽううまくて、含みを持たせたやりとりが、二人の間で交わされます。ま、ほとんどの場合ホロの方が一枚上手を行っていてロレンスはしょっちゅう"ぎゃふん(死語)"という羽目に陥るわけですが。

それにとどまらない会話文の妙については、安眠練炭さんが2巻の感想で的確な指摘をなさっているので、そちらを参照するのが吉。非常に読みごたえのある感想ですので。

 

そして本作では、二人の間の絆にも進展が。ロレンスがホロの大切さに思い至ってのセリフ、「私は、積み荷を諦めたくないのです。それを再び荷台に載せられるのなら、多少の無理は通します」にはなんというかこう……かゆくなると言いますか(笑)。でもいいセリフでしょう?

そしてホロ。いや、必死になっているロレンスを見て、さぞかしやきもきしたことでしょう。彼女にはそんな気はちっともないのに、ロレンスはすれ違いに気がつかず商売勝負に必死になるありさま。そりゃあねぇ(苦笑)。

でもまぁ、最後にはおさまるところにおさまるべきものがおさまっての大団円。ともあれ、これからの二人の関係と旅の行く末が楽しみなシリーズです。

 

で、これはなんというか一読者のわがままというかなんというか、というはなしなのですが。支倉さんにはこのあたりで、シリーズ外の作品を一本書いてみていただきたいなぁ、と。これ以外のおはなしも書けるところを示して、安心させてほしいというか。

要は、これ以外にもネタ出しができてモチベーションを維持できるということを見せてほしい、ということなんですけれど。余計なお世話は百も承知で。

別に舞台はなんでも。またしてもの中世ヨーロッパ風ファンタジーだろうがガチの中世ヨーロッパものだろうがSFだろうが現代学園異能だろうが(笑)。もっともこれだけの会話を書ける力を持っている人なのですから、あまり心配はしていないんですけれどもねー。<矛盾気味

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カテゴリー: 読書
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戦闘城塞マスラヲ Vol.1負け犬にウイルス

タイトル: 戦闘城塞マスラヲ Vol.1負け犬にウイルス (amazon)

作者: 林トモアキ

絵師: 上田夢人

レーベル: スニーカー文庫

出版年月日: 2006-10-31

ASIN: 4044266115

 

『お・り・が・み』シリーズの林トモアキさんの新シリーズは、『お・り・が・み』数年後の世界を舞台に新たな主人公を据えたバトルロイヤルもの。実質的に『お・り・が・み』シリーズの続編といって良いでしょう。そのため、前作に登場した人物や用語、世界観の説明など、結構省略されている部分があります。できることなら前シリーズは読んでおいた方が、『戦闘城塞マスラヲ』の世界に入ってゆきやすいので、読んでおくのが吉です。といいますか『マスラヲ』を楽しめる人であれば『お・り・が・み』も楽しめるでしょうから、読んでおかなければ損! というものです。……tonboさんもイチオシされていますし、だまされたと思ってぜひぜひ。

 

主人公のヒデオは、就職のために上京したもののこれにことごとく失敗、世界から必要とされていないと感じてひきこもりになってしまった20歳。実家からの仕送りも止められ、"もはや死ぬしか"と思い詰めつつも、ゴミ捨て場でノートPCを拾ってしまう。ところがそのPCには、自称・超愉快型極悪感染ウィルスである、電子の精霊ウィル子(正式名称: Will.CO21)が取り憑いていた。

ウィル子はヒデオを、世界を律する聖魔王の座をかけた大会、聖魔杯に参加させるべくけしかける。もうあとがないヒデオは、ひきこもり脱出・負け犬返上を目指して、大会に参加することに! しかし彼は、これといった特技も持たないひきこもり。どうやってこの、超人・人外・魔人が参加する大会を勝ち抜いてゆくのか?

と、おはなしは、こんな具合に転がってゆきます。

 

で、感想。非常におもしろかった! 読んでいる最中はわくわくし、顔はきっとにやけっぱなしだったでしょう。ライトノベル読みを自称されていてまだ未読の方、さっさと買ってきて読みましょう。

……ってこれではさすがになんなので、もう少し。

主人公ヒデオは、物語開始時点ではどん底状態にある(……いやもちろん、単なる修辞です。現実世界、底を見通せばきりがないことは承知しております。ハイ)わけですが、大会に参加することで、その心はうずくまってうじうじしていることをやめ、前に進みはじめます。その描写が、なんとも言えず良いのです。とりあえず、地味ながらお気に入りの描写を引用。

ヒデオはそこに、人と人とのつながりを垣間見た。率直に言えば……楽しそう。面白そう。そんなワクワク感。これもまた、東京のアパートにこもって久しく味わっていない感覚だった。今回の生活用品を揃える買い物にしても、上京したての頃の、あの夢と希望に満ちていた感じが思い出された。

なんてことはない描写なのですが、凝り固まっていた主人公の心がほぐれてゆくことを示して、こちらまで"ワクワク"が伝わってくる、そんな楽しい文章です。いやほんと、ヒデオの心の動きのキュートなことといったら、これはもう萌えキャラですよ? 徹底的に目付きが悪くて、感情表現が乏しくて、でも萌えキャラ。

 

さて、バトルの方の話も。こちらの方はある意味王道。なんの取り柄もないヒデオといまいち能力不明なウィル子の二人が、運とハッタリと勢いで強敵を打ち破ってゆく展開は、お約束とはいえ、いえ、お約束だからこそ、読んでいて楽しめるものでした。これからどんな相手が出てくるか、それにどうやって勝ってゆくのか、先が楽しみです。

 

そしてヒデオをライバル視するリュータが主人公の"ANOTHER ROUND"にもお楽しみが。あの人が堂々と登場したりして、『お・り・が・み』シリーズの読者はニヤニヤしながら楽しめることでしょう。

 

とりあえず総括。新シリーズの滑り出しとしては上々で、続きが楽しみ。てか、早く次を読ませてください(笑)。

ローカルトラックバック
再読感想: 『お・り・が・み』シリーズ: タイトル: お・り・が・み 天の門 (amazon) お・り・が・み 龍の火 (amazon) お・り・が・み 外の姫 (amazon) お・り・が・み 獄の弓 (amazon) お・り・が・み 正の闇 (amazon) お・り・が・み 光の徒 (am...
2006-12-03
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2006/11/04 11:53:20: 感想: 『PINK PARADE』

カテゴリー: 読書
投稿者: さひろ
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PINK PARADE

タイトル: PINK PARADE (amazon)

作者: 御形屋はるか

レーベル: マンサンコミックス

出版年月日: 2006-10-28

ASIN: 4408170267

 

御形屋はるかさんのまんが単行本も、これで確か9冊目(間違っていたらすみません)。過去に同タイトルで出版されていた単行本の新装版になります。最近の『To Heart 2』や『ぽてまよ』でファンになったという方にもぜひ読んでほしいですし、単行本未収録だった『PINK PARADE 湯けむり番外編』『華に嵐』『唇までの距離』が追加収録されていますので、旧版持っているよ、という旧来のファンの方にもぜひ、な単行本です。個人的には、旧版を手に取ったのが御形屋さんのファンになるきっかけだった、という、思い入れのある本でもあります。

単行本全体の印象としては、とにかくバラエティ豊かだな、と。実験的な作品も収録されていたりして、興味深い仕上がりになっています。もちろん、御形屋まんがの持ち味である(とわたしが勝手に考えている(汗)、やさしい味を持った作品も多く収録されていて、その魅力を充分に味わうことができるかと思います。

で、短編集ということで全体をまとめての感想というのはどうにも書きにくかったので、いくつかピックアップして書いてみます。

 

『PINK PARADE』: 表題作を飾っている連作。連邦保安庁長官ヴィンセント=ワイルドと、彼の気をひくために脱獄を繰り返す刑期999年の大悪党ハーシィ=チョコレートとの、ハイテンションコメディ。いやもーバカップル万歳? コメディだけでなく、他者を求めることの楽しさ・求められることの嬉しさも描かれていて、とても楽しくなれる作品群。

『おかしなふたり』: 男女逆転ラブコメディ。女の子みたいに繊細でやさしく、女の子になりたいとあこがれるような男の子が主人公。お相手の彼女は、そんな彼の"オスくさく"ないところを気に入った女の子。男女逆転なエッチシーンはとっーても楽しかった(ネタバレ?)!<趣味丸出し そしてラストシーン。とても素敵で、優しい気持ちになれる、そんな一本。わたしはこのお話、大好きです。

『LITTLE RED LOLLY POP』: 実験的な作品? おはなしも独特なのですが、絵の方でも実験をしているとのこと(あとがき参照)。少女が大人になってしまうことのどうしようもなさとか痛みとか切なさとか、そんなものがよく描かれていて、とても雰囲気のある作品。……まぁ男の(男の子がただ歳を重ねてしまったような、ダメな男の)わたしには、本当のところは理解できないものなんでしょうけれど。

『蔵の中』: 『LITTLE RED LOLLY POP』と、ある意味対になっているように感ぜられる一篇。どんどん先に行ってしまう女の子に取り残される男の子。置いてきぼりをくらった男の子は、いつか追いつくことができる日が来るんだろうか。個人的にとても好きなモチーフを、うまく料理してもらったような感じ。

『夏、還る。』: 複数の要素が絡んだ、ちょっと複雑な構成の一篇。それでもすらっと読めてしまうのは、御形屋さんの手腕なのでしょう。子どものころの不思議を、それが不思議ではなくなったいまも抱え続けている男の子の物語。そして、女の子において行かれてしまった男の子はいつまでも大人になれず中途半端な場所に取り残される。……そんなかんじで読んでいたのですが、御形屋さんのあとがきによると、もう少しべつの意図が込められていたようです。そうかー、なるほどー、というかんじです。

『天から花の降るごとく』: とりあえずウサギ耳萌え。……じゃなくて、いやそれはそれで正しかったりしますが、とりあえずおいておいて。他者からの好意の受け止め方を知らなかった少年が、それを教えられる物語。好意・受容・許容。癒しの一篇。

 

と、とりとめもなく書いてきましたが、こんなところで。これを読んでくださって御形屋さんの作品に興味を持ってもらえれば、とても嬉しいです。

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