戦闘城塞マスラヲ Vol.1負け犬にウイルス

タイトル: 戦闘城塞マスラヲ Vol.1負け犬にウイルス (amazon)

作者: 林トモアキ

絵師: 上田夢人

レーベル: スニーカー文庫

出版年月日: 2006-10-31

ASIN: 4044266115

 

『お・り・が・み』シリーズの林トモアキさんの新シリーズは、『お・り・が・み』数年後の世界を舞台に新たな主人公を据えたバトルロイヤルもの。実質的に『お・り・が・み』シリーズの続編といって良いでしょう。そのため、前作に登場した人物や用語、世界観の説明など、結構省略されている部分があります。できることなら前シリーズは読んでおいた方が、『戦闘城塞マスラヲ』の世界に入ってゆきやすいので、読んでおくのが吉です。といいますか『マスラヲ』を楽しめる人であれば『お・り・が・み』も楽しめるでしょうから、読んでおかなければ損! というものです。……tonboさんもイチオシされていますし、だまされたと思ってぜひぜひ。

 

主人公のヒデオは、就職のために上京したもののこれにことごとく失敗、世界から必要とされていないと感じてひきこもりになってしまった20歳。実家からの仕送りも止められ、"もはや死ぬしか"と思い詰めつつも、ゴミ捨て場でノートPCを拾ってしまう。ところがそのPCには、自称・超愉快型極悪感染ウィルスである、電子の精霊ウィル子(正式名称: Will.CO21)が取り憑いていた。

ウィル子はヒデオを、世界を律する聖魔王の座をかけた大会、聖魔杯に参加させるべくけしかける。もうあとがないヒデオは、ひきこもり脱出・負け犬返上を目指して、大会に参加することに! しかし彼は、これといった特技も持たないひきこもり。どうやってこの、超人・人外・魔人が参加する大会を勝ち抜いてゆくのか?

と、おはなしは、こんな具合に転がってゆきます。

 

で、感想。非常におもしろかった! 読んでいる最中はわくわくし、顔はきっとにやけっぱなしだったでしょう。ライトノベル読みを自称されていてまだ未読の方、さっさと買ってきて読みましょう。

……ってこれではさすがになんなので、もう少し。

主人公ヒデオは、物語開始時点ではどん底状態にある(……いやもちろん、単なる修辞です。現実世界、底を見通せばきりがないことは承知しております。ハイ)わけですが、大会に参加することで、その心はうずくまってうじうじしていることをやめ、前に進みはじめます。その描写が、なんとも言えず良いのです。とりあえず、地味ながらお気に入りの描写を引用。

ヒデオはそこに、人と人とのつながりを垣間見た。率直に言えば……楽しそう。面白そう。そんなワクワク感。これもまた、東京のアパートにこもって久しく味わっていない感覚だった。今回の生活用品を揃える買い物にしても、上京したての頃の、あの夢と希望に満ちていた感じが思い出された。

なんてことはない描写なのですが、凝り固まっていた主人公の心がほぐれてゆくことを示して、こちらまで"ワクワク"が伝わってくる、そんな楽しい文章です。いやほんと、ヒデオの心の動きのキュートなことといったら、これはもう萌えキャラですよ? 徹底的に目付きが悪くて、感情表現が乏しくて、でも萌えキャラ。

 

さて、バトルの方の話も。こちらの方はある意味王道。なんの取り柄もないヒデオといまいち能力不明なウィル子の二人が、運とハッタリと勢いで強敵を打ち破ってゆく展開は、お約束とはいえ、いえ、お約束だからこそ、読んでいて楽しめるものでした。これからどんな相手が出てくるか、それにどうやって勝ってゆくのか、先が楽しみです。

 

そしてヒデオをライバル視するリュータが主人公の"ANOTHER ROUND"にもお楽しみが。あの人が堂々と登場したりして、『お・り・が・み』シリーズの読者はニヤニヤしながら楽しめることでしょう。

 

とりあえず総括。新シリーズの滑り出しとしては上々で、続きが楽しみ。てか、早く次を読ませてください(笑)。