2008/01/24 21:24:00: 2007年下半期ライトノベルサイト杯投票
なんかここ一年以上、まるで感想を書いていないので気が引けるのですが……。まぁでもせっかくなので投票しちゃおうっ! ってことでひとつ。
[新規部門]
『たま◇なま ~生物は、何故死なない?~』(冬樹忍/魚/HJ文庫)(【07下期ラノベ投票/新規/9784894255708】)
新人さんのデビュー作にあたりが多く、もうほくほくなのですよ? そして、その一つがこれ。「第1回ノベルジャパン大賞」の大賞を堂々受賞した作品です。
物語の冒頭、厭世的な主人公・高校生である透のもとにあらわれたのは、鉱物生命体を名乗る由宇。それこそまるで"落ちモノ"のような幕開けです(笑。実際、厭世的な透と人間の常識をまるでしらない由宇の、テンポよく、そしてかみあわない会話に笑わされつつ、コメディ感覚で読み進めることができます。
しかしその楽しさはある意味フェイクで、一歩踏み込めば、人間とは異質な思考を持った鉱物生命体(=由宇)から「きさまら(=地球上の『生命』そのもの)は、何故、死なない/何故、生きているのだ」という猛毒の"問いかけ"が投げかけられます。しかもこの"問い"が、先刻まで笑わせてくれた"テンポよく、そしてかみあわない会話"からでてくるあたり、油断なりません。なかなかの手並みと言うべきでしょうか。
そしてそこからの展開は、主人公にとってなかなかにキツイものだったりして、ぱっと見に反してなかなかにハードな作品です。もちろんコメディ成分も健在で、そのあたりのバランス感覚はお見事の一言。
そしてその先/その末にさきほどの問い「きさまら(=地球上の『生命』そのもの)は、何故、死なない/何故、生きているのだ」に対する答え - それはもちろん、一面的なものであり、個人的なものであるという限界も持つものですが - を主人公が見いだす展開には感心しました。ある種"答えのない問題"に対し、逃げを打たずに真っ向から立ち向かっているのが非常に好印象です。
個人的には非常にポイントが高く、これからの続きに期待大! な作品ですね。
現時点(2008/01)では、3巻までシリーズが進んでいます。ちなみに第2弾『~あなたは、死にますか~』では第1巻とは逆に"死"というテーマと向き合っています。第3弾は、ちょっと箸休め的な展開でしょうか? なんてったって「南の島と海と女の子」! ……まぁ、その裏ではいろいろと事態が進行しているわけですが。
そんなかんじ(どんなかんじだ?)ですので、未読のかたはぜひどうぞお試しあれ!
『C^3 -シーキューブ-』(水瀬葉月/さそりがため/電撃文庫)(【07下期ラノベ投票/新規/9784840239752】)
水瀬さんの作品について語り出すと、自分語りにすり替わってしまうこと多々なので自重の方向で(苦笑。
"呪い"の影響を受けない主人公・夜知春亮のもとには、海外を放浪する父親のもとからさまざまな"呪われた道具"が送りつけられてきます。
今回送りつけられてきたもの。それは、正体は謎の立方体、でも人化すると全裸のせんべい泥棒(ロリ美少女)。で始まる新シリーズ。これまた、オープニングは"落ちモノ"。しかししかし、なにせ『ぼくと魔女式アポカリプス』の作者である水瀬さんのこと、そのままお気楽におはなしが終わるわけもなく……。
やがてやってくるのは呪われた"禍具(ワース)"を破壊することに執念を燃やす敵対組織の"騎士"。彼女と戦うなか、よみがえってくるのは道具として使われ呪われた忌まわしい記憶。
記憶/傷/呪い/絶望と、鬱要素もてんこ盛り。この人の書く鬱展開は"ただそれっぽくするために書いてみた"ではなく、物語展開やキャラクターと絡めて必然性を持たせているに成功していてよいですね。それと対置する形で描かれる現在/治癒/解呪/希望。こちらもしっかりと描いていて好印象。両者のせめぎ合いとギャップが、この作品のおいしいところでもあります。
そして忘れちゃいけないグロとエロ(笑。両者ともきっちり入っています。さすが水瀬さん、読者の期待を裏切らない(笑。
とはいえ今回、グロは抑えられているので、水瀬葉月作品初読のかたにもさほど問題はないでしょう。エロのほうは……あー、ねぇ? 一言「作者・絵師・編集のお三方、よく判っていらっしゃる」ということで(笑。
鬱エログロと同居系落ちモノの融合シリーズ、開始しました! 2008/01には2巻もでており、この先どうなるか、目が離せないシリーズです!
『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』(木ノ歌詠/尾崎弘宣/富士見ミステリー文庫)(【07下期ラノベ投票/新規/9784829164006】
とりあえず百合枠ってことで。……や、べつに百合だから投票するんじゃなくって、よい本だったから、なのですけれどー(笑。
閉塞的な田舎の町を舞台にした、二人の少女のガール・ミーツ・ガール物語。軽やかで悲しげで、現実離れしていて作り物めいていて、印象は夏の青空のように鮮やか。
2007年の7月、中学生の有賀海幸は、携帯の電波すら入らない田舎の町の廃線になったローカル線のレールの上で膝を抱くようにして横たわっていた。来るはずのない電車を待ちながら。彼女が飛び込み自殺をするはずだった、けれど一月前に廃線になってしまった電車を待ちながら。
そんな海幸に声をかけたのは、リガヤ - タガログ語で“幸せ”を意味する言葉 - と名乗る少女。彼女は海幸に手をさしのべ「君が望むなら、見せてあげる。幽霊鉄道を」と語りかける。リガヤの手に導かれた海幸が、廃線の先、一面のひまわり畑の中で見たのは一台の朽ち果てた車両。リガヤはそれと向き合うと宣言した。「-ボクがこいつを『幽霊鉄道』として甦らせてみせる!」と。
導入部にあたる"Overture"の流れはおおむねこんなかんじ(正直このまとめは意味不明もいいところのような気がしないでもないので、公式ページやほかのかたの紹介文など読んでいただければ、と)です。正直、この時点でやられていました(苦笑。廃線になった無人駅のホームと、一面のひまわり畑。自殺志願者の中学二年生海幸と、彼女の手を取って導き、朽ち果てた車両を「幽霊鉄道として甦らせてみせる!」と宣言するリガヤ。謎だらけで、そして先が気になってしかたのなくなる鮮烈なイメージを残す"前奏曲"でした。
そして始まる、二人の夏の日々。リガヤは海幸の家に居候し、海幸が自殺志願者になった理由が語られ、海幸がリガヤの「"幽霊鉄道"を甦らせる」計画を手伝うことになり……二人の関係が徐々に変化し深まってゆくさまが丁寧に描かれてゆきます。この二人の関係性の描き方なんて、百合好きのかたにはたまらないと思いますよ? わたし? えぇえぇ、もちろん速攻で落ちましたとも!
そして明らかになる、リガヤが"幽霊鉄道を甦らせ"ようとする理由とリガヤの"弱さ"。海幸がリガヤを理解し受け入れるところからクライマックスまでは、まさに一直線のスピード感。息を呑むようなクライマックスから凄絶なカタストロフィーを経て、二人はどこにたどり着いたのか。未読のかたは、ぜひご自身の目でお確かめくださいませ。
で、結論としては、よかった! 素晴らしいモノに出会えた! ってところです。もちろん弱点がないわけではないです。海幸がとらわれている、閉塞した田舎の町の描写が、いまひとつ現実感がないとか。二人の関係性には力を割いて描いているわりには内面に踏み込んでみせる切り込み方がいまひとつのような気がする、とか……。しかしそれはそれで、作品にどこか熱にうなされてみる夢のような、作り物めいていて現実感のない、けれどひどく蠱惑的で魅惑的な感覚を与えている要因であるようにも思うので、あげつらうのは野暮というものでしょう。
とにかく読み終えたときの印象は、降っていた雨がやんで太陽が雲からでたように、晴れ晴れとして爽快。作者の木ノ歌さん、ペンネームを変更されるとのことですが、今後の活躍にさらなる期待を!
『アストロノト!』(赤松中学/bomi/MF文庫J)(【07下期ラノベ投票/新規/9784840120821】)
ロケットということで、とりあえず手に取ってみました(笑。こちらも新人さんの作品(第3回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞)ですね。
で、読んでみたら……これがまた、素晴らしかったのです! ネタバレにならないように紹介文を書く自信がないので、とりあえずオフィシャルのページか他のかたがたの紹介文を読んでみていただきたいかな、と。オフィシャルサイトでは、冒頭部分をちょっと読んでみることもできますし。
まず、特筆されるべきは主人公が月を目指す理由。それが明らかになるのは物語も終盤のクライマックスで、なのですが……これがもう、とにかく素晴らしい! 下手なこと書くとネタバレになりかねないので自重しますが、そこにたどり着くまでに張り巡らせておいた伏線が一気に回収される怒濤の展開で、まさにセンス・オブ・ワンダー(死語?)! そして、それに比べれば地味なポイントかもしれませんが、月からの帰還に重要な役割を果たすとあるアイテム。それがなにであるかは、主人公たちには(完全には)判らないのですが、読者には判るようになっています。そしてこのポイントについても伏線は大量に張られていて、そこまでところどころ感じていた違和感を一気に払拭してくれました。「xxxxxxとしてどうよ?」と思っていた部分が、実は伏線になっていたという……。すなおに降参します。ハイ。
そして、主人公をはじめとする登場人物たちもよいかんじですね。主人公・ノトは、まっすぐで伸びやかな性格で、大切なところはがんとして譲らない。ここ一番での芯の強さは読んでいて気持ちよいものでした。彼が心を寄せるレンビアは"それなんてツンデレ?"(笑ではありますが、魅力的なヒロインとしてよく書けていると思います。ナキアミは……それなんてアルルゥ(ぉ? サベラも、懸命なだけではどうにもならない現実を背負うキャラクターとして、あえて泥をかぶることもできる人物としてきちんと描かれていて好印象。あと、今回はチョイ役でしたが、ハヤン帝国のちんまい(笑女帝・ユァンもなかなかのお気に入りです。
……とベタほめしてみましたが、やはり粗というかひっかかるところはいくつかあります。物語が主人公の一人称で語られるにもかかわらず、ノトが月を目指す理由が最期まで伏せられる、というのは、しかたのないこととはいえ、やはりちょっときびしいかな、と。あとは、導入部分のテンポがいまひとつだったのと、この物語単体で考えるとナキアミの恋心が余分な要素になってしまっているところ、そしてクライマックス後のパートが蛇足気味になってしまっていること。まぁ、ナキアミの恋心の扱いについては、2巻以降に期待、ということにしておきましょう。締めの部分が蛇足気味なのも、2巻以降への展開を考えて、ということであればある程度割り引いてもよいかと思えますし。
ちょっといらないことを書いて野暮をやってしまったかな、とも思いますが、文句なしのお奨め作品であることにかわりはありません。未読のかたはぜひ!<そればっかり書いてるな?
実は、これを書いている時点(2008/01/26)では2巻もAmazonに発注済みで、到着を待っているところだったりします(笑。その2巻の評判も、どうやら上々のようで、いやほんとうに、これからが楽しみです!
『神様の悪魔か少年』(中村 九郎/-/Style-F)(【07下期ラノベ投票/新規/9784829176580】)
[既存部門]
『戦闘城塞マスラヲ Vol.2 神々の分水嶺』(林トモアキ/上田夢人/角川スニーカー文庫)(【07下期ラノベ投票/既存/9784044266127】)
『クジラのソラ 04』(瀬尾つかさ/菊池政治/富士見ファンタジア文庫)(【07下期ラノベ投票/既存/9784829119785】)
『円環少女 (6) 太陽がくだけるとき』(長谷敏司/深遊/角川スニーカー文庫)(【07下期ラノベ投票/既存/9784044267087】)
『モノケロスの魔杖は穿つ 4』(伊都工平/巳島/MF文庫J)(【07下期ラノベ投票/既存/9784840121163】)
『Fate/Zero Vol.4 -煉獄の炎-』(虚淵玄/武内崇/TYPE-MOON)(【07下期ラノベ投票/既存/TYPEMOON:UA04】)
……とりあえず最低限のフォーマットはできたので、あとは感想を書き足さないと……。どうにか土曜までには~。
他にも楽しませてくれた作品はたくさんあったのですが、その中からあえて推したいものを選んでみました。リストに漏れた作品に言及するかどうかも迷ってのですが、今回はあえて言及しない方向で。
感想、まだ4つしか書けていないけれど、寝落ちが怖いのでとりあえずアップして投票~orz (@2008/01/26 19:40)









